演目一覧 / 怪談噺。滑稽な味つけも多い
「死神」の一場面のイラスト

死神

しにがみ

金に困って死のうとしていた男の前に、やせこけた死神が現れます。病人の足もとに死神がいれば呪文で追い払える、と教わった男は名医として大当たり。ところが、枕もとに死神のいる大店の主人を前に、大金に目がくらんで……。

分類
怪談噺。滑稽な味つけも多い
系統
江戸
原典
グリム童話『死神の名付け親』、またはイタリアの歌劇『クリスピーノと代母』とされる
作者
初代三遊亭圓朝が明治20年代に翻案
呪文
「アジャラカモクレン……テケレッツのパー」。六代目三遊亭圓生が加えて定着させた
カテゴリ怪談噺
登場人物運に見放された男死神大店の主人と奉公人
舞台江戸の町病人の枕もとろうそくの洞穴
見どころ演者ごとに変わる呪文布団を回すくだりろうそくのサゲ

あらすじ

何をやってもうまくいかず、金も尽きた男が、いっそ死んでしまおうと思い詰めていると、目の鋭いやせこけた老人が声をかけてきました。自分は死神だと名乗り、お前はまだ死ぬ運命ではないと告げて、ひとつの秘密を教えます。

病人の足もとに死神が座っていれば、呪文を唱えて手を打てば死神は消え、病は治る。枕もとに座っていれば、もう寿命で助からない。これを使って医者になれというのです。男が半信半疑で看板を出すと、さっそく日本橋の大店から迎えが来ました。主人の足もとには死神。呪文ひとつで主人は回復し、男はたちまち名医と評判になります。

ぜいたく三昧の日々も長くは続かず、そのうち、どの病人も枕もとに死神が座るようになって、男はまた貧乏に逆戻り。そこへ大きな商家から声がかかります。主人の枕もとにはやはり死神。断ろうとする男に、店の者は大金を積みます。目がくらんだ男は、奉公人たちに布団の四隅を持たせ、死神が居眠りしたすきに布団をくるりと回して頭と足を入れ替え、呪文を唱えました。

その帰り道、男は最初の死神に呼び止められ、無数のろうそくが燃える洞穴へ連れていかれます。ろうそくの一本一本が人の寿命で、男のものは、いまにも消えそうな燃えさし。主人と命が入れ替わったのだと言われ、男は渡された新しいろうそくに火を移そうとしますが、手が震えてうまくいかず……。

サゲ 結末を含みます

タップしてサゲを見る

「ああ、消える……」

男がつぶやいて、演者が高座に倒れ込む「しぐさオチ」がもっとも一般的です。もとは「消えた」と言っていたのを、死んだ者が「消えた」とは言えないはずだと考えた六代目三遊亭圓生が「消える」に改めたとされます。演者による型の違いが特に多い噺です。

サゲのいろいろ

結末を演者が工夫しやすい噺で、助かる型、いったん助かってから消してしまう型、夢で終わる型などさまざまです。

型結末の中身
標準の型「消える」とつぶやいて倒れる。照明を落として表すこともある
くしゃみの型火を移せたものの、風邪のくしゃみで吹き消してしまう(十代目柳家小三治。案は五代目金原亭馬好)
自分で消す型洞穴を出たところで「もう明るいから消したら」と言われ、うっかり吹き消す(立川志の輔)
助かる型倒れたあと起き上がり、火を移せたとめでたく終える。縁起をかつぐ席向けの改作とされる
夢の型「消える」と叫んで目が覚めると、行灯の火が消えていただけだった

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

死神の登場

  • 死神おい、そこの。首をくくる枝なら、そっちのは細くて折れるぜ。
  • 男だ、誰だい、あんた。気味の悪い爺さんだな。
  • 死神死神だよ。そう怖がるな。お前はまだお迎えの番じゃねえんだ。

枕もとと足もと

  • 死神いいか、病人の足もとにおれたちが座ってたら、呪文を唱えて手を二つ打ちな。それで追っ払える。
  • 男枕もとにいたら?
  • 死神そいつはもう寿命だ。手を出すんじゃねえぞ。

布団を回す

  • 男いいかい、おれが手を上げたら、四人いっぺんに布団をくるっと回すんだよ。
  • (死神がこくりこくりと舟をこぐのを横目で見ながら、そっと手を上げる)
  • 男それっ。……アジャラカモクレン、テケレッツのパー。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲ、呪文の決まり文句は古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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