演目一覧 / 滑稽噺
「黄金餅」の一場面のイラスト

黄金餅

こがねもち

下谷山崎町の貧乏長屋で、托鉢坊主の西念がためこんだ金を、あんころ餅にくるんで次々と飲み込み、そのまま死んでしまいます。壁の穴からそれを見ていた隣の金山寺味噌売り・金兵衛は、腹の中の金を自分のものにしようと、長屋の連中を引き連れて麻布の寺まで弔いに出かけます。下谷から麻布まで江戸の町を言い立てる「道中付け」が聴きどころの、初代三遊亭圓朝作とされる噺です。

分類
滑稽噺
系統
江戸
作者
初代三遊亭圓朝の作とされる
原話
はっきりしない。1840年代ごろに成立した名古屋の地誌『金鱗九十九之塵(こんりんつくものちり)』に、独り暮らしの老女を主人公にした似た話があると、2023年に中日スポーツが報じている
圓朝の速記
舞台は芝・将監殿橋そばの裏長屋で、坊主の名は源八。弔いをする寺は「貧窮山難渋寺」、金兵衛が餅屋を出すのは芝の金杉橋のたもと
舞台
下谷山崎町の長屋から、麻布の木蓮寺、桐ヶ谷の焼き場、目黒の餅屋へ
カテゴリ滑稽噺
登場人物托鉢坊主の西念金山寺味噌売りの金兵衛長屋の大家木蓮寺の和尚焼き場の男
舞台下谷山崎町の長屋麻布の木蓮寺桐ヶ谷の焼き場目黒の餅屋
見どころ壁の穴からのぞく金兵衛江戸の町を言い立てる道中付け風呂敷とハタキの即席の法衣酔った和尚のあやしいお経

あらすじ

下谷山崎町の貧乏長屋に、托鉢をして暮らす坊主の西念がいました。爪に火をともすようにして金をためていたこの西念が、風邪をこじらせて寝込みます。見舞いに来た隣の金山寺味噌売り・金兵衛が、何か食べたいものはと聞くと、あんころ餅をたくさん、という返事。金兵衛がなけなしの金で山ほど買ってくると、西念は「人の前では物が食べられない性分で」と、金兵衛を帰してしまいます。

妙だと思った金兵衛が壁の穴からのぞくと、西念は餅から餡を取りのけ、腹に巻いた胴巻から二分金や一分銀をざらざらと出して、餅でひとつずつくるんでは丸呑みしていきます。すっかり飲み込んだところで苦しみ出し、金兵衛が飛び込んで吐き出させようとしますが、西念は口を固く閉じたまま息を引き取りました。

腹の中の金を自分のものにしようと決めた金兵衛は、大家のもとへ行き、西念には身寄りがないから、自分の菩提寺で弔ってやりたいと申し出ます。早桶の代わりに樽に納め、みんなの仕事に差し支えないよう今夜のうちにと、長屋の連中と夜道を運んで出かけました。行く先は、麻布絶口釜無村(あざぶぜっこうかまなしむら。「絶江」と書く資料もあります)の木蓮寺。ここで演者は、下谷から麻布までの道筋を延々と言い立てる「道中付け」を聴かせます。

木蓮寺の和尚は酒に酔っていて、袈裟も払子も質に入れてしまったというありさま。風呂敷を法衣代わりに、ハタキを払子代わりに、茶碗を箸でたたいて鈴(りん)の代わりにして、なんとも怪しげなお経をあげてもらいます。そのすきに金兵衛は、寺の台所から鯵切り包丁をこっそり持ち出していました。

長屋の連中を帰した金兵衛は、ひとりで桐ヶ谷の焼き場へ。朝まで待てと渋る焼き場の男をおどして火を入れさせ、「腹のところだけは生焼けに」と妙な注文までつけます。夜明けに戻ると、骨を拾おうとする男を追い払い、包丁で探って、とうとう金を見つけ出しました。それを袂に詰め込むと、あとのことはほったらかしで立ち去ります。

金兵衛はこの金を元手に、目黒で餅屋を開きます。これが大当たりで、店の餅は「黄金餅」と呼ばれて江戸の名物になりました、という由来話で結ばれます。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

(サゲはなく、「黄金餅」の由来を語って結びます)

落ちのつかない噺として知られます。金兵衛が金を手にして餅屋を開き、それが江戸の名物「黄金餅」になった、という店の由来を語って終えます。なお、寺社の祭礼などで縁起物として売られた粟餅にも「黄金餅」の名がありますが、こちらは餅の黄金色からついた名で、噺の筋とは直接の関係はありません。

長屋から寺までの道中付け

道中付けは、通り過ぎる町や橋、坂の名を調子よく並べて、道のりを聴かせる語りです。黄金餅では、下谷山崎町を出た弔いの一行が、上野から神田、日本橋、京橋を抜け、愛宕下から飯倉を通って麻布の寺に着くまでを、ひと息に言い立てます。演者によって通る道や言い回しは少しずつ違います。下は、港区の資料「南麻布と落語(黄金餅)」に載っている道筋です。

通るところメモ
出発下谷山崎町の長屋今の台東区東上野・北上野のあたり
上野上野の山下から上野広小路へ出て、御成街道を進む―
神田〜日本橋神田川にかかる筋違御門を通り、神田から日本橋へ―
京橋〜愛宕下京橋をまっすぐ進み、新橋の手前で右へ。新し橋(あたらしばし)で左に曲がって愛宕下へ―
飯倉〜麻布神谷町を通って飯倉で坂を上がり、飯倉片町の「おかめ団子」の前から永坂を下る。十番へ出て大黒坂を上がり、一本松へおかめ団子は、江戸時代から明治まで飯倉片町にあった団子屋
到着麻布絶口釜無村(「絶江」とも)の木蓮寺架空の寺
そのあと金兵衛がひとりで樽を背負い、桐ヶ谷の焼き場へ今の品川区西五反田

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

あんころ餅

  • 金兵衛西念さん、何か口に入るものはないかい。遠慮はいらねえよ。
  • 西念それじゃあ……あんころ餅を、たんと食べてみとうございます。
  • 金兵衛病人がそんなに食えるもんかね。まあいいや、買ってきてやらあ。
  • 西念ありがたいことで。ですが、わたしは人さまの前ではどうも喉を通らない性分でして。どうぞお引き取りを。

壁の穴

  • 金兵衛見られて食えねえとは、妙なことを言いやがる。どれ、この穴から……。
  • (壁の穴に片目を当てるしぐさ。のぞいたまま、だんだん目が丸くなる)
  • 金兵衛餡をほじくり出して……おっ、胴巻から出てきたのは金じゃねえか。それを餅でくるんで……飲んじまった。おい、また飲んだよ。

木蓮寺

  • 和尚弔いか。ありがたいが、袈裟も払子も、とうに質屋の蔵に入っておる。
  • 金兵衛しょうがねえな。おい、誰か風呂敷を貸してやんな。払子はそこのハタキでいいや。
  • (ハタキに見立てた扇子をうやうやしく振り、茶碗を箸でチーンとたたくしぐさ)
  • 長屋の男……今のお経、なんだか聞いたことのねえ文句ばかりだったぜ。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋は古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

この噺を聴く・読む PR

音源の有無や演者は商品ページでご確認ください。

他の噺

寄席で生の高座を聴く東京・関西ほか全国の寄席ガイド →