演目一覧 / 怪談噺・人情噺(長編の続き物)
「牡丹灯籠」の一場面のイラスト

牡丹灯籠

ぼたんどうろう

根津の清水谷に住む浪人・萩原新三郎のもとへ、盆の夜から、旗本の娘お露が女中のお米に牡丹の花の灯籠を提げさせて通ってきます。ところがお露は、新三郎に恋い焦がれて死んだはずの娘でした。お札で家を封じた新三郎ですが、店子の伴蔵と女房のお峰のところへ、幽霊から「お札をはがしてほしい」という頼みが……。初代三遊亭圓朝の長編怪談噺です。

読み
ぼたんどうろう。題は「怪談牡丹燈籠」とも書きます
分類
怪談噺・人情噺(長編の続き物)
系統
江戸
作者
初代三遊亭圓朝。幕末の1861〜64年ごろの作とされる
原話
中国・明代の『剪灯新話』の「牡丹灯記」と、それを翻案した浅井了意『伽婢子』(1666年刊)の「牡丹灯籠」。深川の米問屋に伝わる怪談や、牛込の旗本家で聞いた話なども下敷きにしたとされる
構成
1884年(明治17年)刊の速記本で20余りの章に分かれる長編。寄席や落語会では「お露新三郎」「お札はがし」など一部を抜いて演じることが多い
舞台
根津の清水谷、谷中の新幡随院、のちに栗橋宿
季節
夏(盆の十三日から幽霊が通ってくる)
ゆかり
1892年(明治25年)に三代目河竹新七の脚色で歌舞伎化(『怪異談牡丹燈籠』、五代目尾上菊五郎らが歌舞伎座で初演)
カテゴリ怪談噺人情噺
登場人物浪人の萩原新三郎飯島平左衛門の娘お露女中のお米店子の伴蔵伴蔵の女房お峰人相見の白翁堂勇斎新幡随院の良石和尚医者の山本志丈
舞台根津の清水谷谷中の新幡随院栗橋宿
見どころカランコロンと響く駒下駄の音蚊帳越しに幽霊から頼まれる伴蔵百両をめぐる夫婦の相談梯子の上のお札はがし

あらすじ お露新三郎〜お札はがし

根津の清水谷に田畑や貸長屋を持ち、その上がりで暮らす浪人・萩原新三郎は、医者の山本志丈に連れられて行った先で、旗本・飯島平左衛門の娘お露と出会います。二人はひと目で思い合いますが、それきり会えないまま月日が過ぎ、やがて志丈から、お露は新三郎に焦がれて死に、女中のお米も後を追うように亡くなったと聞かされます。

盆の十三日の晩。新三郎が月を眺めていると、カランコロンと駒下駄の音がして、牡丹の花の灯籠を提げたお米と、死んだはずのお露が通りかかります。二人は互いに死んだと聞かされていたと喜び合い、その夜から、お露は毎晩のように新三郎のもとへ通ってくるようになりました。

店子の伴蔵が夜中に戸の隙間からのぞくと、新三郎の首にすがりついているのは、骨と皮ばかりの女の姿。伴蔵から話を聞いた人相見の白翁堂勇斎は、新三郎の顔に死相を見て取ります。お露たちが住むと言っていた谷中の三崎村を尋ね歩いた新三郎は、その帰りに通り抜けた新幡随院で、新しい墓と、見覚えのある牡丹の灯籠を見つけました。

新幡随院の良石和尚は、死霊よけの守りとして金無垢の海音如来の像を貸し、お札を授けます。家の戸口や窓にお札を貼って閉じこもると、お露とお米は中へ入れず、家のまわりを嘆きながら回るばかりになりました。

困ったお米は、お露を連れて伴蔵のもとへ現れ、お札をはがし、新三郎の守り本尊を取りのけてほしいと頼みます。相手が幽霊とわかって震え上がる伴蔵に、女房のお峰は、旦那に万一のことがあれば暮らしが立たないからと、百両の金と引き換えにすればいいと知恵をつけます。

伴蔵夫婦は新三郎に行水をすすめ、お峰が体を洗っているすきに、伴蔵が新三郎の身につけていた海音如来を、用意しておいた瓦の不動の像とすり替えます。その夜、お米が百両を持って現れると、伴蔵は震える足で梯子に上り、裏窓のお札をはがしました。翌朝、新三郎は苦しみ抜いた顔で息絶え、そのかたわらには髑髏が、首にかじりつくように寄り添っていたのでした。噺はこのあと、百両を手にした伴蔵とお峰の後日談へと続いていきます。

サゲ(オチ) 結末を含みます

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(続き物のため、決まったサゲはありません)

圓朝の速記本で20余りの章におよぶ長編で、もともと何夜にも分けて語り継ぐ続き物です。寄席や落語会では一部の段だけを抜いて演じ、地口などの決まったサゲで落とすのではなく、段の区切りで終えます。

長編の組み立てと主な段

全体は、お露と新三郎・伴蔵夫婦をめぐる怪談の筋と、飯島平左衛門とその奉公人・孝助をめぐる仇討の筋が、交互に進む形で組み立てられています。広く知られている「お露の亡霊に取りつかれた新三郎」の話は、長編の前半の一部です。

主な中身筋の流れ
発端(刀屋)若き日の飯島平左衛門(当時は平太郎)が、刀屋の店先で酒乱の侍・黒川孝蔵を斬る仇討の筋
お露新三郎山本志丈の引き合わせで、お露と新三郎が出会い、ひと目で思い合う怪談の筋
お札はがし百両と引き換えに、伴蔵夫婦が新三郎の守り本尊とお札を取りのける怪談の筋
孝助の槍飯島家の奉公人・孝助が、間男の源次郎と取り違えて主人の平左衛門を突く仇討の筋
栗橋宿(お峰殺し)百両を元手に栗橋で荒物屋(関口屋)を開いた伴蔵が、女房のお峰を手にかける怪談の筋
関口屋お峰が奉公人に乗り移って伴蔵の悪事を口走り、志丈との再会から事が動く怪談の筋
結末伴蔵は捕らえられ、孝助は主人の仇のお国と源次郎を討って本懐を遂げる二つの筋が合流

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

盆の夜

  • (遠くから、カランコロンと下駄の音が近づいてくる)
  • 新三郎こんな夜更けに、どなたです。……おや、その灯籠は。
  • お米まあ、萩原さま。お嬢さま、萩原さまでございますよ。
  • 新三郎お露さんは亡くなったと聞いていましたが……。
  • お露わたくしのほうこそ、あなたが亡くなったと聞かされておりました。

蚊帳越しの頼み

  • お米伴蔵さん、お願いがございます。萩原さまのお宅のお札を、どうかはがしてくださいまし。
  • 伴蔵と、とんでもねえ。そんなことをしたら、旦那がどうなるか……。
  • お米はがしていただけなければ、お嬢さまが毎晩泣いておいでなのです。
  • 伴蔵あ、明日の晩まで待っておくんなさい。かかあとも相談しなきゃならねえ。

夫婦の相談

  • 伴蔵断りゃ祟られる、はがしゃ旦那が危ねえ。どっちに転んでもろくなことはねえや。
  • お峰おまえさん、旦那がいなくなったら、うちだって食べていけないんだよ。
  • 伴蔵だから困ってるんじゃねえか。
  • お峰それなら、引き受ける代わりにお金をもらえばいい。百両って言ってごらんよ。それだけあれば、小さな店のひとつも出せるじゃないか。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋は古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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