演目一覧 / 怪談噺
「真景累ヶ淵」の一場面のイラスト

真景累ヶ淵

しんけいかさねがふち

貧乏旗本の深見新左衛門は、借金の催促に来た鍼医の皆川宗悦を、酒の勢いで斬り殺してしまいます。年月がたち、新左衛門の次男・新吉は、そうとは知らずに宗悦の娘で富本の師匠・豊志賀と深い仲に。三遊亭圓朝が作った長い続き物の怪談噺で、寄席では発端の「宗悦殺し」や「豊志賀の死」などの段を一席ずつ演じます。

読み
しんけいかさねがふち。「真景累が淵」とも書きます
分類
怪談噺
系統
江戸
作者
初代三遊亭圓朝。安政6年(1859)の作で、圓朝の最初の創作ものとされる
題名
もとは『累ヶ淵後日の怪談』。明治に素噺に改めたとき、幽霊は「神経」のせいとする当時の流行語をもじって「真景」とした。発案は漢学者の信夫恕軒とされる
速記
1887〜88年(明治20〜21年)に『やまと新聞』に連載
構成
前半の怪談と、後半の殺生沙汰・敵討ちを合わせた全97章。通しで演じると1日1時間で15日かかるといわれる
舞台
江戸の根津・小日向・谷中から、下総国羽生村(今の茨城県常総市)の累ヶ淵へ
季節
段によって変わる(宗悦殺しは師走、お久殺しは八月の末)
カテゴリ怪談噺
登場人物鍼医の皆川宗悦旗本の深見新左衛門長男の深見新五郎次男の新吉宗悦の娘・豊志賀(姉)とお園(妹)豊志賀の弟子・お久門番の勘蔵
舞台小日向服部坂の深見屋敷根津七軒町谷中の質屋・下総屋下総・羽生村の累ヶ淵
見どころ按摩が宗悦に見える場面豊志賀の嫉妬と顔の腫れ物からっぽの駕籠親の因果が子に報う連鎖

あらすじ 宗悦殺し〜豊志賀の死

安永二年の暮れ、根津七軒町に住む盲目の鍼医・皆川宗悦は、こつこつ貯めた金を高利で貸していました。小日向服部坂の貧乏旗本・深見新左衛門に貸した三十両の返済を迫りに行くと、酒びたりの新左衛門は言い争いの末にかっとなり、刀を抜いて宗悦を斬り殺してしまいます。亡骸は葛籠に詰めて下男に捨てさせますが、巡り巡って宗悦の住まいに近い長屋で見つかり、宗悦の娘たちが父の死を知ることになります。

まもなく新左衛門の奥方が病みつき、通りがかりの按摩に療治させるようになります。ある晩呼び入れた按摩の顔が、殺した宗悦に見えた新左衛門は、思わず斬りつけます。ところが倒れていたのは奥方でした。その後、新左衛門自身も役目の最中に討たれて死に、深見の家は取り潰しに。幼い次男の新吉は門番の勘蔵に引き取られて育ちます。

「深見新五郎」の段。家を飛び出していた長男の新五郎は、戻ってみると家は取り潰され、両親も亡くなっていました。死のうとしたところを谷中の質屋・下総屋の主人に救われ、店に奉公します。同じ店の女中お園に思いを寄せますが、お園は宗悦の妹娘。互いの素性は知りません。お園はなぜか新五郎がぞっとするほど嫌いで、思いあまった新五郎が藁の上に押し倒すと、その下に刃を上にした押切があり、お園は死んでしまいます。逃げた新五郎は三年後、捕り手から逃げる途中でまた押切を踏んで足を深く切り、お園の祥月命日に縄にかかりました。

「豊志賀の死」の段。それから十九年。根津七軒町で富本節を教える豊志賀は、宗悦の姉娘で、身持ちの堅い師匠として評判でした。そこへ手伝いに通うようになったのが、勘蔵を伯父と思って育った二十一歳の新吉です。三十九歳の豊志賀は、ある寒い晩をきっかけに新吉と深い仲になりますが、これも互いに親の因縁を知りません。噂が立って弟子は離れ、残ったのは継母につらく当たられている小間物屋の娘お久ばかり。

新吉とお久が笑い合うのを見るたびに、豊志賀の胸は嫉妬で煮えくり返ります。やがて目の下にできた腫れ物が見る見る広がり、顔はすっかり崩れて寝ついてしまいました。夜中に胸ぐらをつかまれる看病に耐えかねて新吉が外へ出ると、ばったりお久に会い、鮨屋の二階へ。ところが、そのお久の顔までが急に腫れ上がって見え、新吉は夢中で逃げ出します。

伯父の勘蔵の家へ駆け込むと、来ているはずのない豊志賀が待っていて、これまでの心得違いをわびて、きれいに別れたいと言います。勘蔵の世話で駕籠に乗せて送り出そうとしたところへ、長屋の者が「師匠が死んだ」と知らせに来ました。駕籠の戸を開けると、中は空っぽ。家に戻って布団を上げると、豊志賀の書き置きが出てきます。

このあと「お久殺し」の段で、新吉はお久と下総の羽生村へ駆け落ちします。雨の夜、累ヶ淵の土手でお久は草刈り鎌の上に転んでひざを切り、その顔がまた豊志賀に見えた新吉は、その鎌でお久を殺してしまいます。ここから噺は、土手の甚蔵ら羽生村の人々を巻き込む後半へと続いていきます。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

「女房を持てば、七人まで取り殺す」

全体が長い続き物なので、地口のようなサゲはありません。「豊志賀の死」のくだりは、新吉が見つけた豊志賀の書き置きで区切られます。看病を捨てて出ていった新吉への恨みがつづられ、この先女房を持てば七人まで取り殺す、と書かれていました。この呪いが、お久をはじめ新吉と関わる女たちの運命につながっていきます。

主な段

通しで演じると十五日はかかるといわれる大作なので、ふだんは段を切り出して一席ずつ演じます。前半の怪談の部分が、今も高座でよくかかります。

段中身主な人物
宗悦殺し借金の催促に来た宗悦を、新左衛門が酒の上で斬り殺す。すべての因縁の発端皆川宗悦、深見新左衛門
深見新五郎新左衛門の長男が宗悦の妹娘お園に片思いし、押切の刃で死なせてしまう深見新五郎、お園
豊志賀の死新左衛門の次男・新吉と、宗悦の姉娘・豊志賀の恋。嫉妬で顔の崩れた豊志賀が恨みを残して死ぬ新吉、豊志賀、お久、勘蔵
お久殺し新吉とお久が下総の羽生村へ駆け落ちし、累ヶ淵の土手で新吉がお久を手にかける新吉、お久、土手の甚蔵
後半名主の妻への横恋慕を発端に、色と欲の殺生沙汰とその報い、敵討ちが描かれる。最終話は「お熊の懺悔」新吉ほか羽生村の人々

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

催促

  • 宗悦殿様、お貸ししたお金のことでございます。今日こそは、いくらかなりともお返しいただきたく、杖を頼りに参りました。
  • 新左衛門くどいぞ、宗悦。都合がつけば返すと申しておるではないか。
  • 宗悦その「都合」を伺いに来るのも、もう何度目になりますことか。お武家様のお約束が、それでは通りませんでしょう。
  • 新左衛門黙れ。それ以上申すと、ただでは置かんぞ。

按摩

  • 新左衛門これ按摩、もそっと手加減せい。骨にこたえるわ。
  • 按摩これしきでございますか。殿様の刀を受けたときの痛みは、こんなものではございませんでした……。
  • (振り返った新左衛門が、見えない目を開いた按摩の顔を見て凍りつく)

空の駕籠

  • 長屋の男新吉さん、どこをほっつき歩いてたんだ。師匠が息を引き取ったよ。
  • 新吉冗談はよしとくれ。師匠なら今、そこの駕籠に乗ったばかりで……。
  • (駕籠の戸をそっと開けるしぐさ。中をのぞき込み、そのまま後ずさる)
  • 新吉……伯父さん、いない。誰もいないよ。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋は古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

この噺を聴く・読む PR

音源の有無や演者は商品ページでご確認ください。

他の噺

怪談噺のあらすじ一覧牡丹灯籠・真景累ヶ淵・死神ほか → 寄席で生の高座を聴く東京・関西ほか全国の寄席ガイド →