演目一覧 / 滑稽噺・前座噺
「饅頭こわい」の一場面のイラスト

饅頭こわい

まんじゅうこわい

怖いものを言い合う長屋の若い衆。「饅頭が怖い」と打ち明けた男に、仲間は饅頭を山ほど届けて仕返しをたくらむ。前座からトリまで、誰もが一度は聴く定番の滑稽噺です。

分類
滑稽噺・前座噺
系統
上方で育ち、明治の末に東京へ
原話
中国・明代の笑話集『笑府』(馮夢竜)巻十二
上演時間
江戸版 15分前後 / 上方の長講版 30〜50分ほど
季節
通年
登場人物長屋の若い衆強がりの男おやっさん(上方)
舞台長屋大坂・農人橋(上方)
見どころ食べる仕草怪談(上方)

あらすじ 江戸版

町内の若い衆が集まって、暇つぶしに「何がいちばん怖いか」を言い合います。蛇、蜘蛛、蟻、馬と次々に出るなか、ひとりだけ「怖いものなんかあるもんか」と鼻で笑う男がいます。

しつこく問い詰められた男は、しぶしぶ「実は饅頭が怖い」と白状します。名前を聞いただけで気分が悪くなったと言って、隣の部屋で布団をかぶって寝込んでしまいました。

日ごろから生意気なこの男をこらしめてやろうと、仲間は金を出し合い、ありったけの饅頭を買ってきて枕元に並べます。ところが、こっそりのぞくと男は「怖い、怖い」と言いながら、栗饅頭も、そば饅頭も、酒饅頭も、うまそうに平らげているのでした。

一杯食わされたと気づいた仲間が「お前が本当に怖いものは何なんだ」と詰め寄ると……。

サゲ 結末を含みます

タップしてサゲを見る

「このへんで、熱いお茶が一杯こわい」

饅頭をたらふく食べて、のどが渇いたところで「次はお茶が怖い」。最後までとぼけ通す男の一言で終わります。「濃いお茶」「渋いお茶」など、言い回しは演者によって少しずつ違います。

上方と江戸のちがい

上方の長講版は、饅頭の話の前に二つの話が入ります。仲間の一人が狐に化かされた話と、怖いもの知らずで通っているおやっさんが、若いころに身投げの女に出会った怪談です。笑いの噺の途中で、客席が静まり返るほど怖くなるのが上方版の聴きどころです。

江戸版上方版(長講)
長さ15分前後。前座がよくかける30〜50分ほど
前半怖いものの言い合いから、すぐ饅頭へ狐に化かされる話(東京の『九郎蔵狐』に近い話)と、おやっさんの怪談が入る
怪談の舞台なし大坂・東横堀川にかかる農人橋のあたり
主な人物長屋の若い衆、強がりの男光っつぁん、おやっさん ほか
サゲどちらも「お茶が怖い」で終わる

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

怖いものを言い合う

  • 兄貴分おい、おめえは何が怖えんだ。黙ってねえで言ってみな。
  • 男怖えもん? そんなもん、あるもんか。蛇なんざ頭が痛えときに鉢巻きにすらぁ。
  • 兄貴分強がるねえ。本当にひとつもねえのか。
  • 男……ねえことはねえ。……まんじゅう。
  • (言ったとたんに顔をしかめて、肩をすくめる)
  • 男言わせるなよ。ほら、名前を聞いただけで背中がぞくぞくしてきた。

饅頭の山を前にして

  • 男うわぁ、栗饅頭だ。こいつは怖え。……(ぱくり)……怖えなぁ。
  • 男そば饅頭まである。怖くて見ていられねえから、口の中へしまっちまおう。
  • (皮の薄さ、あんこの重さを、食べる手つきで演じ分ける)

サゲ

  • 兄貴分てめえ、だましやがったな。本当に怖えもんは何なんだ。
  • 男へえ……このへんで、熱いお茶が一杯こわい。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋と定番のくすぐり(蛇の鉢巻き、お茶のサゲ)は古典のまま、言い回しは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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