演目一覧 / 唐茄子屋(とうなすや)
「唐茄子屋政談」の一場面のイラスト

唐茄子屋政談

とうなすやせいだん

吉原通いが過ぎて勘当された若旦那の徳三郎。頼る先もなく、吾妻橋から身を投げようとしたところを叔父に止められ、翌日から唐茄子(かぼちゃ)売りに出されます。慣れない天秤棒によろけながら歩くうち、裏長屋で飢えた母子に出会い……。

読み
とうなすやせいだん
別題
唐茄子屋(とうなすや)
分類
人情噺
系統
江戸
舞台
吾妻橋、本所達磨横町の叔父の家、浅草の裏長屋・誓願寺店
季節
夏(炎天下の行商)
カテゴリ人情噺
登場人物若旦那の徳三郎(徳兵衛とも)本所の叔父誓願寺店の母子因業な大家唐茄子を売ってくれる町の人
舞台吾妻橋本所達磨横町浅草の誓願寺店
見どころ売り声の出ない若旦那通りがかりの人の助け舟飢えた母子に売り溜めを渡す場面因業大家への怒り

あらすじ

大店の若旦那・徳三郎(演者によっては徳兵衛)は、吉原の花魁に入れあげて親から勘当されます。遊んでいたころは調子よく寄ってきた花魁にも親類にも相手にされず、三日ほど食うや食わずでさまよった末、吾妻橋から身を投げようとします。

そこへ通りかかって抱き止めたのが、本所達磨横町に住む叔父でした。叔父は「死ぬ気になれば何でもできるだろう」と、翌朝、徳三郎に唐茄子を山と積んだ天秤棒を担がせ、行商に出します。

重い荷を担ぐのも、ものを売るのも初めての徳三郎は、売り声も出せずに炎天下をよろよろ歩き、とうとう浅草の田原町あたりで荷を放り出して倒れてしまいます。見かねた通りがかりの男が事情を聞き、近所の人たちに声をかけて、唐茄子をあらかた売りさばいてくれました。

残りはあと二つ。日暮れ近く、吉原田んぼの道で昔のことを思い出したりしながら、徳三郎は誓願寺店という裏長屋に入ります。呼び止めたのは、品のいいやつれた女でした。亭主は元は武士で、いまは旅商いに出て便りがないといいます。子どもが何日も食べていないと知った徳三郎は、自分の弁当を子どもに食べさせ、その日の売り溜めをそっくり女に渡して帰ります。

手ぶらで戻った徳三郎の話を、叔父は初めは疑いますが、連れ立って誓願寺店へ行ってみると長屋は大騒ぎ。徳三郎の置いていった金は、因業な大家が溜まった店賃として取り上げてしまい、申し訳なさに女は首をくくったのでした。

怒った徳三郎は大家の家へ乗り込んで殴りつけ、長屋の人たちも加勢します。女は手当てが早く、命を取り留めました。この一件がお上の耳に入り、大家はきびしくとがめられ、徳三郎は人助けを褒められて勘当を許されます。母子は叔父の長屋に引き取られました。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

徳三郎は勘当を許され、めでたしで結ばれます。

地口などの決まったサゲはなく、人情噺らしく筋の決着で終わります。題の「政談」は、終わりにお上の裁きが入ることから来ています。前半だけで切るときは、唐茄子売りの苦労と町の人の助けを中心に、笑いの多い一席になります。

前半だけか、通しか

通すと長い噺なので、前半と後半に分けて演じられることが多い噺です。寄席では、吉原田んぼで売り声の稽古をするうちに端唄になってしまうあたりで切ることもあります。どこで切るかは演者によって違います。

前半で切る後半まで通す
中身勘当、吾妻橋の身投げ、叔父の家、慣れない唐茄子売りと町の人の助け誓願寺店の母子、因業大家の仕打ち、首くくりの騒ぎ、お上の裁きと勘当の許し
持ち味若旦那の世間知らずぶりと、江戸の人の世話焼きの笑い徳三郎の改心と、人の情けが巡ってくる人情
聴ける機会寄席の持ち時間でもかかる独演会や落語会など、時間のとれる場が中心

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

吾妻橋

  • 徳三郎南無阿弥陀仏……。
  • 叔父おい、待て待て。若い身空で何をしやがる……なんだ、徳じゃねえか。
  • 徳三郎お、叔父さん……。もう、どこへ行っても相手にしてもらえないんです。
  • 叔父あれだけ遊んで回ったんだ、当たり前だ。死ぬ覚悟があるんなら、その覚悟で明日から働いてみろ。

売り声

  • 叔父いいか、表へ出たら大きな声で「唐茄子屋でござい」と言うんだ。
  • 徳三郎……とうなす……や……。
  • (天秤棒を担いだまま、よろけて足がもつれるしぐさ)
  • 徳三郎だめだ、肩はちぎれそうだし、声は喉の奥に引っこんじまうし……。

誓願寺店

  • 女あの、唐茄子屋さん。小さいのをひとつ、いただけますか。
  • 徳三郎へい。ついでと言っちゃなんですが、ここで弁当を使わせてもらえませんか。……おや、坊や、そんなにこの弁当を見て。
  • 女お恥ずかしい話ですが、この子はおとといから何も……。
  • 徳三郎そんなら、坊やがお食べ。それから、おかみさん、これは今日の売り溜めです。とっておいてください。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋は古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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