演目一覧 / 滑稽噺
「抜け雀」の一場面のイラスト

抜け雀

ぬけすずめ

小田原の宿場にある小さな旅籠に、身なりの悪い若い男が泊まります。毎日大酒を飲んで何日も居続けたあげく、宿賃を請求されると一文無し。自分は絵師だから、かたに絵を描いていくと言って、店の衝立に雀を描いて立ち去ります……。

分類
滑稽噺
系統
江戸・上方(上方では「雀旅籠」とも)
由来
知恩院の襖絵から雀が抜け出したという言い伝えがもとといわれる
舞台
東海道・小田原宿の旅籠
ゆかり
五代目古今亭志ん生が掘り起こし、古今亭の家の芸になった
カテゴリ滑稽噺
登場人物若い絵師旅籠の主人と女房品のいい老人
舞台小田原宿の旅籠
見どころ雀が抜け出す朝の場面人のいい主人と気の強い女房地口のサゲ

あらすじ

小田原の宿場で、はやらない旅籠を営む人のいい主人。女房にせっつかれて客引きに出て、薄汚れた身なりの若い男を連れてきます。男は朝昼晩と酒を飲み、七日たっても発つ様子がありません。おそるおそる内金を頼むと、案の定一文無しでした。

男は自分は絵師だと名乗り、宿賃のかたに、店の白い衝立に雀を五羽描きます。「わたしが戻るまで、この絵は売ってはいけない」と言い残して、男は旅立ちました。

翌朝、主人が雨戸を開けると、朝日を浴びた雀が衝立から抜け出して飛び回り、また絵の中に戻っていきます。この話が評判になって客が押し寄せ、旅籠は大繁盛。とうとう小田原の殿様まで、衝立を買いたいと言ってきます。

ある日、品のいい老人が泊まり、衝立を見て「このままでは雀が疲れて落ちて死ぬ」と言います。老人は雀が休めるように鳥籠と止まり木を描き足し、雀はそこで羽を休めるようになりました。やがて立派な身なりになって戻ってきた若い絵師は、描き足された籠を見ると衝立の前に手をつき、「わたしは親不孝をいたしました」と言います。わけを尋ねる主人に……。

サゲ 結末を含みます

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「親に駕籠をかかせました」

描き足した老人は、若い絵師の父親でした。父に「籠を描かせた」ことと、親を駕籠かき(駕籠舁き、駕籠を担ぐ人足)にしてしまったことをかけた地口です。駕籠かきは、当時は低く見られた仕事だったため、親不孝のたとえになっています。

サゲのことば

サゲは同じ音の言葉の重ね合わせです。今では耳なじみのない言葉なので、まくらで駕籠かきの説明を入れておく演者もいます。

ことば意味
籠をかく(描く)父親が、衝立に鳥籠を描き足したこと
駕籠をかく(舁く)駕籠を担ぐこと。駕籠かきは、街道で客を運ぶ人足
衝立部屋の仕切りや目隠しに立てる家具。旅籠の入り口に置かれていた
止まり木鳥籠の中で鳥がとまる横木。雀が休めるようにと描き足された

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

宿賃の催促

  • 主人あの、お客さま。まことに申し上げにくいんですが、少しばかり内金を……。
  • 絵師ない。
  • 主人……ないとおっしゃいますと。
  • 絵師一文もない。そのかわり、わたしは絵描きだ。そこの衝立を貸しなさい。

抜け出す雀

  • (主人が雨戸を一枚ずつ開ける。差し込む朝日に目を細め、ふと衝立を見る)
  • 主人おい、おっかあ、来てみろ。雀が……絵の雀が、飛んでるぞ。
  • 女房朝っぱらから寝ぼけたことを……あれまあ、ほんとうだよ。

老人の描き足し

  • 老人見事な腕だが、惜しいことに、この雀には休むところがない。いずれ疲れて落ちてしまう。
  • 主人へえ、そういうもんでございますか。
  • 老人筆と硯を貸してもらおう。籠と止まり木を描いてやろう。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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