演目一覧 / 滑稽噺
「初天神」の一場面のイラスト

初天神

はつてんじん

正月二十五日は初天神。ひとりで出かけたい父親は、女房に言われてしぶしぶ息子を連れていきます。何も買わない約束はすぐに崩れ、飴を買い、凧を買い。いざ凧揚げを始めると、夢中になったのは父親のほうでした。

分類
滑稽噺
系統
上方・江戸(もとは上方の噺で、3代目三遊亭圓馬が東京に移した)
原話
安永2年(1773)刊『聞上手』の「凧」。寛保2年(1742)『軽口若夷』の「いかのぼり」を、より古い例とする見方もある
季節
冬(正月二十五日の初天神)
題の由来
天神様(菅原道真)を祀る天満宮の、年の初めの縁日
カテゴリ滑稽噺
登場人物父親息子母親(女房)凧屋
舞台天満宮の縁日天満宮の隣の空き地
見どころ子どものおねだり凧揚げで子どもに返る父親

あらすじ

一月二十五日の初天神。ひとりで天神様へ出かけようとした男は、女房に息子を連れていけと言われます。屋台であれこれねだられるのが目に見えているので嫌がりますが、連れていかないなら近所に家のことを言いふらすと息子に脅され、何もねだらないと約束させて連れて出ます。

約束はどこへやら、息子はあの手この手で何か買わせようとします。根負けした男は、口がふさがればおとなしくなるだろうと飴を買ってやります。東京の型では、このあと団子をめぐるひと騒動が入ることもあります。

参拝の帰り、凧の屋台の前で息子が凧をねだり、凧屋の主人もうまく息子をけしかけます。結局凧を買わされた二人は、天満宮の隣の空き地へ。子どものころ凧揚げが得意だった男は、手本を見せてやると言って糸を握ります。

ところが揚げ始めると、男はすっかり夢中です。代わってくれと息子が何度頼んでも、うるさいと取り合いません。とうとう息子はあきらめて……。

サゲ 結末を含みます

タップしてサゲを見る

「お父つぁんなんか連れてこなんだらよかった」

上方のサゲです。親が子を連れてきたはずが、子どもが親を連れてきたことを悔やむという、立場の逆転がおかしみです。原話の「凧」では、最後に連れてこなければよかったとぼやくのは父親で、上方でもそう演じる場合があります。東京では、凧揚げの最中に息子が人にぶつかって父親が謝り、次に父親がぶつかると息子が「何分おとなのいたしましたことですから」と謝る形のサゲが知られます。

上方と東京のサゲ

もとは上方の噺で、3代目三遊亭圓馬が東京へ移しました。どちらも凧揚げで父と子の立場が入れ替わるところが山場ですが、落とし方が違います。

上方東京
サゲ息子が「お父つぁんなんか連れてこなんだらよかった」とぼやく人にぶつかった父親のかわりに、息子が「何分おとなのいたしましたことですから」と謝る
伝わり方もとからの上方の噺3代目三遊亭圓馬が上方から移した
原話との違い原話の「凧」でぼやくのは父親。落語では子どもの側に言わせる形が主流になった

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

連れていけ

  • 女房あんた、天神様に行くなら、この子も連れてっておくれ。
  • 父嫌だよ。あれ買え、これ買えって、うるさいんだから。
  • 息子連れてってくれないなら、おとっつぁんがゆうべ言ってたこと、隣のおばさんに話しちゃうよ。
  • 父……わかった、わかった。そのかわり、何もねだらないな。

飴をひとつ

  • 息子ねだらないよ。ねだらないけど、あの飴、おいしそうだねえ。
  • 父それをねだるって言うんだ。
  • 息子ちゃんとおとなしくするから、ごほうびの前払い。
  • (しぶしぶ懐から銭を出し、口をとがらせる)

凧揚げ

  • 父見てろ、凧はこうやって風に乗せるんだ。……おお、揚がった揚がった。
  • 息子おとっつぁん、もう代わってよ。
  • 父うるさい、今いいところなんだ。
  • (空を見上げたまま、糸を手繰る手つきに夢中になる)

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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