演目一覧 / 滑稽噺
「寝床」の一場面のイラスト

寝床

ねどこ

大店の旦那は人柄もよく、長屋の店子にも慕われています。ただひとつの困りごとは、下手な義太夫を人に聞かせたがること。会を開くたびに、長屋の者も店の者も、あれこれ言い訳をこしらえて逃げ出します。とうとう旦那がへそを曲げてしまい……。

分類
滑稽噺
系統
上方・江戸(もとは上方の『寝床浄瑠璃』で、明治中期に東京へ移った)
別題
寝床義太夫、寝床浄瑠璃、素人義太夫、素人浄瑠璃
原話
安永4年(1775)の笑話本『和漢咄会』の「日待」など、江戸の小咄に同じ趣向の話が多く見られる
舞台
大店の旦那の家と、その長屋
カテゴリ滑稽噺
登場人物義太夫好きの旦那番頭長屋の店子たち丁稚の定吉
舞台旦那の店長屋
見どころ次々に出てくる苦しい言い訳機嫌が悪くなったり直ったりする旦那義太夫の会の惨状

あらすじ

表通りに店を構える旦那は、裏の長屋の家主でもあります。面倒見がよく、店子からも慕われていますが、義太夫に凝っていて、それがひどく下手。しかも人に聞かせたくてたまりません。

今夜も義太夫の会を開くと決め、番頭に長屋の者を呼びに行かせます。ところが戻ってきた番頭の口から出るのは、急な注文が入った、親類に不幸があった、腹をこわした……と、断りの言い訳ばかり。店の者に聞かせようとすると、こちらも揃って仮病を使います。

ようやく自分の義太夫が嫌がられていると気づいた旦那は、すっかりへそを曲げます。「店子は長屋から出て行ってもらう。店の者には暇を出す」と言い渡して、ふて寝してしまいました。

あわてた店子と店の者は相談し、酒が入れば下手な義太夫も我慢できるだろうと、聞きに行くことに決めます。番頭が「皆さん、ぜひ聞きたいと申しております」と持ち上げると、旦那はたちまち機嫌を直し、酒と料理を並べて会を始めます。

旦那が目をつぶって熱演するうちに、客はみな酔いつぶれて、ごろごろ寝てしまいます。やがて客席が静かなのに気づいた旦那は怒りますが、ひとり丁稚の定吉だけが、起きたまま泣いています。自分の語りに感じ入ってくれたのかと喜んで、どこが悲しかったのかと尋ねると……。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

「あそこは、あたくしの寝床でございます」

旦那が義太夫を語った「床」(ゆか。太夫が座って語る台)は、ふだん定吉が寝ている場所でした。みんなが寝てしまったのに、自分だけは寝る場所をふさがれて眠れない、と泣いていたわけです。義太夫の「床」と「寝床」をかけたサゲです。

旦那を描くか、長屋を描くか

同じ筋でも、演者によって力の入れどころが違います。昭和の名人ふたりの描き方は、対照的だとよく言われます。もとは上方の噺で、上方では『寝床浄瑠璃』の題でも伝わります。

八代目 桂文楽五代目 古今亭志ん生
力点旦那の人物描写長屋の者たちの困りぶり
笑いの作り方義太夫の話になると人が変わる旦那の心の動きを、細かく描く旦那の義太夫に振り回される人たちを、大胆に誇張して笑わせる

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

番頭の報告

  • 旦那で、長屋の皆さんは何人来てくれるんだい。
  • 番頭へえ、それが……。豆腐屋さんは、急に大きな注文が入ったそうで、今夜はひと晩じゅう仕込みだと。
  • 旦那そりゃ商売だ、しかたがない。ほかの人は。
  • 番頭金物屋さんは寄り合い、鳶の頭は遠くの火事場へ……。おかみさんたちは、そろってお腹をこわしたそうで。
  • 旦那……揃いも揃って、今夜に限ってかい。

旦那のふて寝

  • 旦那わかった。わたしの義太夫が聞けないような人には、長屋にいてもらわなくて結構。店の者にも、みんな暇を出す。
  • (羽織を脱ぎ捨て、ぷいと横を向いて寝転んでみせる)
  • 番頭だ、旦那、そんな殺生な……。

会のあと

  • 旦那おや、みんな寝ちまったのかい。人がこれだけ一生懸命語ったのに……。おや、定吉だけは起きて、泣いてるじゃないか。
  • 旦那子どもでも、わかる者にはわかるんだねえ。どこが悲しかった。親子の別れのくだりかい。
  • 定吉いいえ、そうじゃありません……。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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