演目一覧 / 滑稽噺
「船徳」の一場面のイラスト

船徳

ふなとく

勘当されて船宿に居候している若旦那の徳兵衛は、退屈しのぎに船頭になると言い出します。浅草の観音様の四万六千日、船頭が出払った船宿で、なじみの客を乗せて漕ぎ出しますが、舟はまっすぐ進みません。

分類
滑稽噺
系統
江戸
由来
長編の人情噺『お初徳兵衛浮名の桟橋』の発端を、明治期に初代三遊亭圓遊が滑稽噺に仕立て直したもの
季節
夏(浅草観音の四万六千日の縁日)
舞台
大川端の船宿と大川(隅田川)
カテゴリ滑稽噺
登場人物若旦那の徳兵衛船宿の親方船宿のおかみさん二人連れの客
舞台大川端の船宿大川(隅田川)
見どころ棹と櫓のしぐさ江戸の夏の暑さ客のあわてぶり

あらすじ

道楽が過ぎて勘当された徳兵衛は、大川端の船宿で居候の身です。毎日が退屈なうえ、世話になっている親方への手前もあって、船頭にしてほしいと頼み込みます。親方は渋りますが、船頭たちも賛成したので引き受けることになりました。

とはいえ、力のない若旦那にはなかなかお呼びがかかりません。そんなある夏の盛り、浅草の観音様の四万六千日。船頭たちが出払ったところへ、なじみの客がやってきます。おかみさんが心配するのもかまわず、徳兵衛は張り切って舟を出します。

棹を差せば舟はぐるぐる回り、石垣のほうへ寄っていくばかり。客が大丈夫かと聞けば、この前はお客をひとり川へ落としたが今日は大丈夫、と答える始末です。客は暑さと怖さで汗びっしょりになります。

やっとの思いで向こう岸までたどり着いたものの、徳兵衛はもうへとへと。客を岸へ上げると、肩で息をしながらこう頼みます……。

サゲ 結末を含みます

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「お客さま、お上がりになりましたら、船頭をひとり雇ってください」

自分が船頭なのに、帰りの舟を漕ぐ力が残っていないので、客に別の船頭を頼んでくれと泣きつくサゲです。櫓を流してしまい、川に入った客に徳兵衛がおぶってもらおうとする形もあります。瀧川鯉昇は、最初に徳兵衛を質屋の若旦那と決めておき、客が仕事を放り出した徳兵衛を見て「客も流した」と言うところで落としています(質草を流す、にかけたもの)。

人情噺から滑稽噺へ

『船徳』のもとは、近松門左衛門『曽根崎心中』の登場人物の名を借りた長編の人情噺です。明治になって初代三遊亭圓遊が発端の部分を取り出し、当時はやりのくすぐりを入れて笑いの噺にしました。

お初徳兵衛浮名の桟橋船徳
種類人情噺滑稽噺
長さ長編一席もの
名前『曽根崎心中』のお初と徳兵衛の名を借りる主人公の若旦那・徳兵衛の名を残す
成り立ちもとになった長編初代三遊亭圓遊が発端部を作り直した

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

船頭志願

  • 徳兵衛親方、あたしを船頭にしておくれ。
  • 親方若旦那、船頭は力仕事ですよ。箸より重いものを持ったことがおありで?
  • 徳兵衛算盤なら毎日持ってたよ。

四万六千日

  • 客暑いねえ。おかみさん、舟は出せるかい。
  • おかみさんあいにく、うちの若い衆はみんな出払っておりまして……。
  • 徳兵衛あたしがいますよ!
  • おかみさんそれが心配なんですよ。

大川の上

  • 客おい、さっきから同じところを回ってないか。
  • 徳兵衛舟が言うことを聞かないんです。
  • (棹を両手で握って腰を落とし、舟の揺れに合わせて上半身を大きく傾ける)
  • 客石垣だ、石垣にぶつかる!

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

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