演目一覧 / 滑稽噺
「千両みかん」の一場面のイラスト

千両みかん

せんりょうみかん

暑い盛りに、大店の若旦那が寝ついてしまいました。心残りを聞き出してみれば「みかんが食べたい」。季節はずれのみかんを探して町じゅうを駆け回った番頭が、ようやく見つけた一個には千両の値がついていて……。

読み
せんりょうみかん。「千両蜜柑」とも書きます
分類
滑稽噺
系統
上方・江戸(もとは上方の噺で、江戸へ移されたとされる)
原話
明和9年(1772)刊の笑話本『鹿の子餅』の「蜜柑」
季節
夏(旧暦の六月、土用のころ)
登場人物大店の若旦那番頭の佐兵衛大旦那みかん問屋の番頭
舞台大店の奥座敷みかん問屋の蔵
見どころ真夏のみかん探し一房いくらの勘定番頭の心変わり

あらすじ

六月の暑い盛り、ある大店の若旦那が寝込んでしまいました。医者の見立ては「気の病。何か心残りがあるはずで、それがかなえば治る」。ところが父親の大旦那が聞いても、若旦那は何も言いません。

そこで呼ばれたのが、若旦那とは幼なじみの番頭、佐兵衛です。笑わない、必ずかなえると約束して聞き出すと、若旦那の望みは「みかんが食べたい」。てっきり女のことだと思っていた番頭は拍子抜けし、「座敷いっぱいにしてお目にかけます」と安請け合いします。

ところが大旦那は「この真夏に、どこにみかんがある」。できないと言えば若旦那は気落ちして死ぬかもしれない。そうなれば主殺しで、逆さ磔だとおどかされ、番頭は青くなって町へ飛び出します。見当違いの店に飛び込んで「みかんなら問屋だろう」と諭され、ようやくみかん問屋へたどり着きました。

問屋の蔵には冬に仕入れたみかんが積まれていましたが、ほとんどが腐っています。やっと見つけた無傷の一個の値は千両。大旦那は「せがれの命には代えられない」と即座に払い、若旦那はおいしそうに食べて、みるみる元気になります。

みかんは十房。一房が百両の勘定です。若旦那は七房を食べ、残りの三房を「両親とお前に」と番頭に渡しました。三房を手に廊下へ出た番頭は、ふと考えます。何年も奉公して暖簾分けしてもらっても、もらえる金はたかが知れている。ところが手のひらには、三百両……。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

番頭は三房のみかんを持って、そのまま姿をくらましました。

決まった一言ではなく、番頭の行動で終わるサゲです。千両の値に振り回されるうちに、ただのみかん三房を三百両の宝だと思い込んでしまう。値打ちの感覚が狂っていくおかしさが、この噺の落としどころです。

上方と江戸

筋はほぼ同じですが、地名や、みかんに千両の値がつくいきさつが違います。

上方江戸
みかんを探す先天満の青物市場が出てくる江戸の町なかの問屋を探し回る
千両のいきさつ問屋ははじめタダでよいと言う。代金を払いたいと言うと、商いとなれば千両より下にはならないと告げられる冬から蔵ごと保管してきた手間を挙げて、問屋のほうから千両だと言う

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

若旦那の心残り

  • 佐兵衛若旦那、決して笑いません。どなたにも言いません。何がお望みなんです。
  • 若旦那……みかんが、食べたいんだよ。
  • 佐兵衛みかん。なあんだ、そんなことで。お座敷いっぱいに積んでお目にかけますよ。

大旦那の小言

  • 大旦那佐兵衛、いま何月だと思ってる。この土用のさなかに、みかんがどこにある。
  • 佐兵衛あっ……。
  • 大旦那請け合ったからには探しておいで。せがれが気落ちして死んだら、主殺しだよ。
  • (番頭が首をすくめ、汗をぬぐいながら立ち上がる)

一房いくら

  • 佐兵衛(若旦那の口もとを見ながら)十房で千両だから、一房が百両……。あ、また一房。百両が、ぺろりと。
  • 若旦那佐兵衛、残りの三つはおとっつぁんとおっかさんと、お前で分けておくれ。
  • 佐兵衛へえ。……三房で、三百両。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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