演目一覧 / 滑稽噺
「はてなの茶碗」の一場面のイラスト

はてなの茶碗

はてなのちゃわん

京都・清水の音羽の滝のほとり。茶店で休んでいた大坂者の油屋は、京で名高い茶道具屋の金兵衛、通称「茶金」さんが、ありふれた茶碗をしげしげと眺めて「はてな」と首をかしげるのを目にします。目利きが首をかしげた品なら掘り出し物に違いない。そう踏んで茶碗を手に入れた油屋ですが、じつは割れもヒビもないのに水が漏るだけの茶碗でした。ところがこの茶碗、思いもよらない値打ちがついていきます。

読み
はてなのちゃわん。東京では「茶金(ちゃきん)」とも
分類
滑稽噺
系統
上方(東京へは明治の中ごろに移されたと、三代目桂米朝が推察しています)
原話
随筆とされますが、出典は特定されていません
舞台
京都・清水の音羽の滝のほとりの茶店と、茶道具屋・茶金の店
ゆかり
上方では三代目桂米朝が復活させたとされる噺。2023年には、この噺をもとにした舞台が大阪・新歌舞伎座と名古屋・御園座で上演されました
カテゴリ滑稽噺
登場人物大坂者の油屋茶道具屋の茶金(金兵衛)茶金の番頭茶店の主人関白帝鴻池善右衛門
舞台清水の音羽の滝茶金の店
見どころ茶店の主人との駆け引き店先での番頭との押し問答雲の上へ上っていく茶碗の評判

あらすじ

京都で油を担いで売り歩いている、大坂生まれの男。清水の音羽の滝のほとりの茶店で一服していると、京で名の通った茶道具屋の主人・金兵衛、通称「茶金」さんが、店の茶碗を手に取って何度も眺め、「はてな」と首をかしげて帰っていきました。

茶金さんが首をかしげたからには、よほどの値打ち物に違いない。油屋は茶店の主人に売ってくれと持ちかけます。主人も同じことを考えて渋りますが、油屋は脅しまがいの押しの強さで、とうとう二両で買い取ってしまいます。

油屋は茶碗を緞子の袋と桐の箱に納め、茶金さんの店へ「千両の値打ちがある品」と売り込みに行きます。番頭が相手にせず押し問答になっているところへ、店の騒ぎを聞きつけた金兵衛が出てきます。

金兵衛の話では、その茶碗は割れもヒビもないのに、どこからか水がぽたぽた漏る。それが不思議で首をかしげただけで、値打ち物でも何でもないのでした。がっかりする油屋に、金兵衛は気の毒がって三両で茶碗を引き取り、いつか親元へ帰って孝行できるよう、地道に励むようにと諭して帰します。

ところがこの話が評判になります。関白の鷹司公が茶碗を見て歌を詠み、それが公家の間で広まると、とうとう帝まで興味を持ちます。茶碗から漏れた水は御裾をぬらし、箱には帝の筆で「はてな」と書き添えられました。

こうなると、もう天下の名品。大坂の豪商・鴻池善右衛門が、千両の保証金と引き換えに預かるという形で、金兵衛から茶碗を買い取ります。金兵衛は油屋を探し出して半分の五百両を渡し、残りは施しと店の者たちへのふるまいに使うと告げます。後日、油屋がまた威勢よく茶金の店へやって来ます。今度は「十万八千両の金儲け」だと言うのですが……。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

「今度は水瓶の漏るやつを見付けて来ました」

茶碗が漏って千両なら、水瓶ならもっと大きな儲けになるはず、という油屋の早合点です。サゲの直前には、油屋が音頭を取って水瓶を金兵衛の店へ運び込む場面があります。

上方の『はてなの茶碗』と東京の『茶金』

もとは上方の噺で、東京では『茶金』の題でも演じられます。三代目桂米朝は、明治の中ごろに東京へ移されたと推察しており、東京では四代目橘家圓喬の十八番と評されました。上方では米朝が復活させたとされ、落語作家の小佐田定雄は「(米朝が)ほとんど創作したと言っていい噺」と述べています。

上方『はてなの茶碗』東京『茶金』
主な題はてなの茶碗茶金(はてなの茶碗とも)
油屋の男大坂から来て、京都で油を担いで売り歩く商人江戸の商人に置き換えられ、口ぶりは職人に近い
茶金の店衣棚(三代目桂米朝の型)木屋町(五代目古今亭志ん生の型)

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

茶店で

  • 油屋おやっさん、その茶碗、わいに売ってんか。
  • 茶店の主人いやいや、これは手放せまへん。うちの大事な品でおます。
  • 油屋さっきまで番茶入れて、客に出してたやないか。
  • 茶店の主人……それとこれとは、話が別でおます。

茶金の店先

  • 番頭うちは、こういうお品はお預かりしておりまへん。どうぞお引き取りを。
  • 油屋見もせんと何がわかるねん。箱、開けてみい。千両の品やで。
  • 金兵衛店先がえらい騒がしいようやけど、何事どす。
  • 油屋あ、茶金さん。あんたが清水で首かしげてた、あの茶碗だす。

首をかしげたわけ

  • 金兵衛あの茶碗はな、割れもヒビもあらへんのに、どこからか水が漏りますのや。
  • 油屋……へ。漏る。
  • 金兵衛けったいなこともあるもんやと、それで「はてな」と言うただけどす。
  • (油屋、抱えていた桐の箱を、そろりと膝に下ろす)
  • 油屋わいの二両が、ぽたぽた漏れていきよった……。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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