演目一覧 / 滑稽噺
「崇徳院」の一場面のイラスト

崇徳院

すとくいん

大店の若旦那が寝込んだのは恋わずらいでした。茶店で会った娘が残したのは、崇徳院の和歌の上の句だけ。礼金に目の色を変えた出入りの熊五郎は、三日のうちに娘を探し出そうと、町じゅうで歌を叫んで回ります。

分類
滑稽噺
系統
上方・江戸(もとは上方の噺)
原話・作者
初代桂文治の作とされる。人情噺『三年目』の発端が独立したという説もある
別題
『皿屋』『花見扇』
題の由来
小倉百人一首77番、崇徳院の「瀬をはやみ」の歌
カテゴリ滑稽噺
登場人物大店の若旦那出入りの熊五郎熊五郎の女房大旦那娘の家の出入りの男
舞台大店の奥座敷寺社の茶店町の床屋
見どころ床屋をはしごして叫ぶ熊五郎和歌をもじったサゲ

あらすじ

大店の若旦那が寝ついてしまい、どの医者に見せても治りません。気の病で、心にかかっていることが晴れれば治るといいますが、若旦那は誰にもわけを話しません。困った大旦那は、若旦那と仲のよい出入りの熊五郎に聞き出してくれと頼みます。

熊五郎に打ち明けたわけは、恋わずらいでした。二十日ほど前、参詣の折に寄った茶店で美しい娘を見かけ、落とした茶帛紗を拾って渡すと、娘は「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」と上の句だけを書いて去っていった。下の句は「われても末に あはむとぞ思ふ」で、いつかまたお会いしましょうという意味です。けれど、どこの誰かがわかりません。

若旦那はあと五日ももたないと聞いた大旦那は、三日で娘を見つけたら借金を帳消しにし、礼金も出すと約束します。熊五郎はやみくもに走り回って二日を無駄にし、女房の知恵で、人の集まる湯屋や床屋で上の句を大声で叫んでみることにします。

三日目、床屋を何軒もはしごして、頭も顔もつるつるです。日暮れに入った床屋で、飛び込んできた客が、出入り先のお嬢さんが茶店で会った若旦那に恋わずらいをしていると話し出します。手がかりは茶帛紗と崇徳院の歌。熊五郎は男につかみかかり、互いに「うちへ来い」と引っ張り合ううち、床屋の鏡が落ちて割れてしまい……。

サゲ 結末を含みます

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「割れても末に 買わんとぞ思う」

鏡をどうしてくれると床屋の主人に言われた熊五郎の返事です。下の句「われても末に あはむとぞ思ふ」をもじり、「末」を月末にかけて、割れた鏡は月末の払いで買って返します、と言っています。掴み合う相手に「手を放せ」と言われ、「放さねえ、合わすんだ」と返して落とす形もあります。題が『皿屋』の場合は、最後の店が床屋ではなく皿を売る店で、割れるのも売り物の皿になります。

上方と江戸

もとは上方の噺で、江戸(東京)にも移されました。東京では3代目桂三木助の十八番とされます。筋はほぼ同じで、若旦那が娘と出会う寺社が違います。

上方江戸
出会いの場所高津宮(高津さん)上野の清水寺(清水観音堂)
よく知られる演者2代目桂枝雀、桂吉朝など3代目桂三木助、3代目古今亭志ん朝など
サゲ「割れても末に 買わんとぞ思う」、または「合わすんだ」で落とす
別題『皿屋』『花見扇』

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

恋わずらいの打ち明け

  • 熊五郎若旦那、水くさいや。あっしにだけ、そっと言っておくんなさい。
  • 若旦那……笑わないかい。
  • 熊五郎笑いません。
  • 若旦那茶店で会った娘さんが、どうしても忘れられないんだよ。
  • 熊五郎なんだ、そんなことで死にかけてたんですかい。

床屋で叫ぶ

  • (戸をがらりと開け、腹の底から声を張る)
  • 熊五郎瀬をはやみー! 岩にせかるるー!
  • 床屋いらっしゃい……って、何の騒ぎだい。
  • 熊五郎いや、なんでもねえ。ついでにひげをあたってくんな。
  • 床屋お前さん、朝からもう何軒目だい。あたるひげが残ってないよ。

見つけた

  • 男……で、お嬢さんが言うには、その歌が瀬をはやみ、とかいう。
  • 熊五郎おい! その話、くわしく聞かせろ!
  • 男な、なんだお前は。
  • 熊五郎こっちは三日前から、その娘を探してるんだ!

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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