演目一覧 / 滑稽噺(人情噺の味わいも強い)
「妾馬(八五郎出世)」の一場面のイラスト

妾馬(八五郎出世)

めかうま

長屋の娘お鶴が殿様に見初められ、お屋敷に上がって世継ぎを産みました。兄の八五郎は殿様のお召しで屋敷へ行くことになりますが、口のきき方も作法も知らない職人気質。ていねいな言葉を付け焼き刃で覚えて乗り込んだものの……。

分類
滑稽噺(人情噺の味わいも強い)
系統
江戸
原話
宝永2年(1705)の『軽口あられ酒』の「馬に乗りつけぬ医者」
別題
八五郎出世(前半だけを演じるときの題)、妾の馬
上演時間
通すと1時間を超える
カテゴリ滑稽噺人情噺
登場人物八五郎妹のお鶴殿様の赤井御門守側用人の三太夫
舞台長屋大名屋敷
見どころでたらめなていねい言葉酔って唄う都々逸母親を思う八五郎の涙

あらすじ

大名の赤井御門守が、通りがかりの長屋で十七になる娘お鶴を見初め、屋敷へ奉公に上げます。お鶴は世継ぎの男の子を産み、お部屋様と呼ばれる身分になりました。

殿様は、お鶴の兄の八五郎を屋敷へ呼ぶことにします。大家にていねいな口のきき方を教わった八五郎は、借り物の紋付きで出かけますが、取次ぎの側用人・三太夫を相手に、でたらめなていねい言葉を連発します。

殿様の前に出ても、八五郎のぶっきらぼうは止まりません。ところが殿様は、飾り気のない物言いをかえって面白がり、酒をふるまいます。酔った八五郎は、きれいに着飾った妹を見て胸がいっぱいになり、孫の顔を見たがっている母親のことを話しながら泣き出し、景気直しに都々逸をうなります。

すっかり気に入られた八五郎は、侍に取り立てられます。今はここで切る演者が多い噺ですが、続く後半では、石垣杢蔵と名を改めた八五郎が、殿様の使いで馬に乗ることになり……。

サゲ 結末を含みます

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「どこへ行くか、馬に聞いてくれ」

乗り慣れない馬が暴れて走り出し、「どちらへお出かけか」と聞かれた八五郎が答える一言です。「妾(めかけ)」の兄が「馬」で失敗するという後半まで演じて、はじめて題の意味がわかります。後半は出来がよくないともいわれ、侍に取り立てられるところで、しぐさで切って終える演者がほとんどです。

前半と後半

「妾馬」は通しの題、「八五郎出世」は前半だけを演じるときに使われる題です。今かかるのは、ほぼ前半です。

前半(八五郎出世)後半
中身八五郎が屋敷に招かれ、殿様に気に入られて侍に取り立てられる石垣杢蔵となった八五郎が、馬に乗って騒ぎを起こす
聴きどころていねい言葉の失敗、都々逸、母を思う涙乗り慣れない馬に振り回される滑稽
終わり方取り立てられたところで、しぐさで切る「馬に聞いてくれ」でサゲ

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

大家の稽古

  • 大家いいか八っつぁん、頭に『お』、しまいに『奉る』。これさえつけりゃ、たいていはていねいになる。
  • 八五郎おう、わかった。お腹がおすき奉る、ってなもんだな。
  • 大家……まあ、だまっているのがいちばんだ。

三太夫とのやりとり

  • 三太夫その方が、お鶴の方様の兄、八五郎であるか。
  • 八五郎おう、お八五郎でございます奉る。
  • (三太夫が額に手を当てて天を仰ぐしぐさ)

殿様の御前

  • 殿様八五郎とやら、苦しゅうない。思うたとおりに申せ。
  • 八五郎そうですかい。じゃあ遠慮なく。……おい、鶴。おめえ、いい着物着せてもらってるなあ。
  • 八五郎おふくろがな、孫の顔が見てえって、毎晩言ってるんだ。……すいません殿様、酒が目にしみやがって。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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