演目一覧 / 滑稽噺
「蛇含草」の一場面のイラスト

蛇含草

じゃがんそう

夏のある日、友だちの家に遊びに来た男は、軒に吊るされた妙な草を見つけます。大蛇が人を丸呑みしたあと、これをなめて腹をしずめるという「蛇含草」。面白がって分けてもらったところへ、餅が焼けはじめ、話はいつしか餅の大食いに。ふくれた腹をかかえて帰った男は、あの草のことを思い出します。

分類
滑稽噺
系統
上方(上方で生まれた噺で、東京でも演じられる)
原話
寛文12年(1672)版の笑話本『一休関東咄』上巻「大しょくばなしの事」とされます
類話
東京の『そば清』は同じ筋立てで、大食いするものが蕎麦。民話の「とろかし草」とも共通点が指摘されています
季節
夏
舞台
友だち(東京では隠居)の家と、男の住む長屋
サゲ
「餅が甚平を着て、あぐらをかいていた」の一言で終わる。蛇含草が人間を溶かす草だったとわかる結末
登場人物甚平を着た男友だち(東京では隠居)
舞台友だちの家長屋
見どころ餅の曲食いふくれた腹で帰るくだり障子を開けたあとの一言

あらすじ

夏のある日、甚平姿の男が友だちの家へ遊びに行くと、汚れた草が吊るしてあります。聞けば「蛇含草」という薬草で、うわばみ(大蛇)が人を丸呑みしたとき、これをなめて腹の張りをしずめるのだとか。珍しがった男は、少し分けてもらいます。

そのうち友だちが火をおこし、もらい物の餅を焼きはじめました。男が焼けたそばから手を出すと、友だちは「断ってから食べるのが礼儀だろう。ひとこと言えば、この箱の餅を全部食べたってかまわない」とからかいます。男は「それなら全部食べてみせよう」と言い出しました。

ただ食べるだけでは芸がないと、男は餅を放り上げては、さまざまな格好で口で受ける「曲食い」を披露します。初めは余裕たっぷりでしたが、だんだん手が止まり、あと二つというところで、とうとう降参。帰りがけに「鏡を貸してくれ」と言うので、今さら身づくろいかと聞けば、下を向くと口から餅が出てくるので、鏡に映して下駄を探すのだと言います。

長屋に帰って横になっても、腹は苦しくなるばかり。男は甚平の紐に結わえておいた蛇含草を思い出し、胃薬がわりにと口に入れます。

あくる日、心配になった友だちが長屋を訪ねて障子を開けると、男の姿はありません。そこには……。

サゲ(オチ) 結末を含みます

タップしてサゲ(オチ)を見る

「餅が甚平を着て、あぐらをかいていた」

蛇含草は、食べたものの消化を助ける草ではなく、人間のほうを溶かしてしまう草だった、というわけです。

『蛇含草』と『そば清』

大食いをした男が、薬草の力で腹の中のものを溶かそうとして、自分が溶けてしまう。同じ骨組みの噺が、上方生まれの『蛇含草』と、東京で演じられる『そば清』(別題『蕎麦の羽織』)です。

蛇含草そば清
系統上方生まれ。東西で演じられる主に東京で演じられる
大食いするもの餅盛りそば
草を知るきっかけ友だち(東京では隠居)の家に吊るしてあった薬草を分けてもらう信州の山道で、うわばみが猟師を呑んだあと草をなめて腹を戻すのを見る
食べる理由からかわれて、箱の餅を全部食べると言い出すそば屋の客との賭け
サゲ餅が甚平を着て、あぐらをかいていたそばが羽織を着て座っていた

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

吊るされた草

  • 男おい、軒にぶら下がってる、その汚ねえ草はなんだい。
  • 友だち汚ねえとはご挨拶だな。蛇含草といって、ありがたい薬草だ。
  • 男薬草? あんなしおれたのがかい。
  • 友だちうわばみが人をひと呑みにするだろう。腹がぱんぱんになったところで、これをぺろりとなめる。するとすうっと腹がおさまるんだそうだ。
  • 男へえ、そいつは重宝だ。ひとつまみ、分けてくんねえ。

餅の曲食い

  • 男さあ、見ててくれよ。ほいっと放って……(首をのけぞらせて、ぱくり)。
  • 友だちおう、うまいもんだ。
  • 男お次は、うしろ向きで受けてみせる。……ほいっ。(ぱくり)
  • (何個目かで、受けた餅をなかなか呑みこめず、目を白黒させる)
  • 友だちどうした、だいぶ間が延びてきたな。あと二つだぞ。
  • 男……二つが、山に見えてきた。

帰りがけ

  • 男すまねえが、鏡をちょいと貸してくんねえか。
  • 友だち今さらめかしこんでどうする。
  • 男いや、下を向くと口から餅が出てきそうでな。鏡に映して、下駄を探すんだ。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋とサゲは古典のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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