演目一覧 / 人情噺
「文七元結」の一場面のイラスト

文七元結

ぶんしちもっとい

腕はいいのに博打で身を持ちくずした左官の長兵衛。娘のお久が吉原に身を売って作ってくれた五十両を懐に、年の瀬の吾妻橋を渡っていると、身投げしようとする若者に出会います。三遊亭圓朝がつくった人情噺の大作です。

分類
人情噺
系統
江戸
作者
三遊亭圓朝。中国の話をもとにしたとされる
速記
1889年(明治22年)の『やまと新聞』に掲載
季節
冬(年の瀬から大晦日にかけて)
ゆかり
歌舞伎『人情噺文七元結』
カテゴリ人情噺
登場人物左官の長兵衛女房のお兼娘のお久近江屋の手代・文七近江屋卯兵衛佐野槌の女将
舞台本所達磨横町の長屋吉原の佐野槌吾妻橋
見どころ吾妻橋の五十両江戸っ子の意地の張り合い

あらすじ

本所に住む左官の長兵衛は、腕は立つのに博打にのめり込み、借金だらけ。年の瀬のある日、賭場から帰ると娘のお久がいません。女房のお兼と言い争っていると、吉原の大店、佐野槌から使いが来ます。お久は父の借金を返すため、自分を買ってほしいと女将に頼みに来ていたのでした。

女将は長兵衛に五十両を貸し、来年の大晦日まではお久を手元で預かるが、返せなければ店に出すと言い渡します。目の覚めた長兵衛は、五十両を懐に家路につきました。

吾妻橋で、若い男が川へ飛び込もうとしています。鼈甲問屋近江屋の手代、文七が、集めた五十両をすられ、死んでわびるつもりだというのです。いくら止めても聞かない文七に、長兵衛はさんざん迷ったすえ、娘が身を売った金だと明かして五十両をたたきつけ、逃げるように立ち去ります。

ところが文七がなくしたと思った金は、使いの先に置き忘れたもので、すでに店に届いていました。わけを聞いた主人の卯兵衛は、翌日文七を連れて長兵衛の長屋を訪ね、金を返そうとします。「江戸っ子が一度出した金を受け取れるか」と意地を張る長兵衛。押し問答のすえ、卯兵衛が表から呼び入れたのは……。

サゲ 結末を含みます

タップしてサゲを見る

文七とお久はのちに夫婦となり、麹町に元結の店を開きます。これが文七元結のはじまり、と結ぶのが型です。

地口のサゲはなく、近江屋が身請けしたお久が晴れ着姿で現れる場面で山場を迎え、元結の由来を語って締めくくります。「文七元結」は江戸時代に実在した丈夫な元結の名です。

演者による違い

見ず知らずの若者に娘の身代金を渡す理由や、筋の不自然なところの処理は、演者によってさまざまです。

演者工夫
六代目 三遊亭圓生、五代目 古今亭志ん生娘は死ぬわけではないが、おまえは死ぬ。見殺しにはできないと、いやいや渡す
林家彦六、十代目 柳家小三治主人への忠義で死のうとする文七に感じ入り、未練なく渡す
三代目 古今亭志ん朝お久が夜道をひとりで吉原へ向かう時刻を、不自然でない時間に改めた
立川談春五十両は一年では返せないとして、返済期限を二年に延ばした

名場面のセリフ 当サイトの書き下ろし

吾妻橋

  • 長兵衛おい、待ちねえ。若えのが、なに早まったことをしようってんだ。
  • 文七放してください。五十両なくして、もう店へは帰れません。
  • 長兵衛五十両……。よりによって、その額かい。
  • (懐に手をやり、出しかけてはひっこめる。しばらく川を見つめる)

五十両を投げる

  • 長兵衛これはな、娘が吉原へ身を沈めてこしらえた金だ。娘は死ぬわけじゃねえ。おめえは死ぬってんだろう。
  • 文七そんな大事なお金、いただけません。
  • 長兵衛うるせえ、持ってけってんだ。
  • (包みを文七にたたきつけ、振り返らずに駆け去る)

長屋の押し問答

  • 卯兵衛どうかこのお金はお納めください。
  • 長兵衛一度やっちまったもんだ。江戸っ子がそうですかって受け取れるかい。
  • お兼(屏風の陰から)おまえさん、もらっておきなよ。

特定の落語家の口演を書き起こしたものではありません。筋と結末は圓朝以来の型のまま、セリフは当サイトで書き下ろしています。

主な演者

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